お弁当屋

私が実家を出て、十五年くらい経ちます。出てからほとんど帰ったことがありません。家を出てから帰るとすれば両親が建てた別荘の方に行きます。今は兄家族が住んでいるので、もう帰ることはないと思っています。私が家わ出てから実家の周りはかなり変わってしまいました。隣に団地があったのですが、そこには今はローソンがあります。そして、周辺には多くのスーパーも出来ています。私がいた頃には本当に何もなかったのに。

最近お弁当屋さんが出来たようで、かなり人気があるそうです。マミーという名前の個人経営のお弁当屋さんで、何種類かメニューはあるそうですが、一番人気は「エビフライ弁当」。これは780円には見合わない位の大きなエビフライが三本も入っているそうです。弁当のプラスチック容器からはみ出した三本のエビフライが食欲を誘う。私は行ったことがありませんが、父がたまに行くようです。そこでは毎回エビフライの注文を受けてから揚げるので、待ち時間は10分から15分かかるみたいです。そして、混んでいるともっとかかります。ジッと待っていると、奥から調理場にいるおばさんの声が聞こえます。耳をそばだてていると「はあ、しんどい。しんどい、しんどいわ」と言っています。呪いの言葉のように延々と続いているそうです。これを聞きながら大の大人(男の人が多い)がジッと立って待っている。なんて殺伐としているような、平和なような。混沌とした世界。ジューっとエビを揚げる音がのろいの言葉に迫力を与えているのだろうな。父は最近この呪いの言葉が心地よくなってきたそうです。もう、呪いにかかっているのでしょう。

私はお弁当を買って食べたことはあまり経験としてありません。食べきられないなと思うから、挑戦できません。でも、このエビフライ弁当はとても美味しそう。一度食べてみたいな。他にもお総菜が入っているようで、きっと栄養も偏らないようにしてあるのだと思います。想像しただけでお腹が空いてきました。