勝手に腹を立てない

仕事が終わって帰宅。さぁ、これから寝るまでの間のんびり過ごすかという憩いの時間…… のはずが、帰って早々、いきなり会社から着信。嫌な予感がした。

電話に出たら、「ちょっと必要なものがあるんだけど、持ち帰ってませんか?」とのことだった。必要なものってのは、ある仕事の資料なんだけど、それがなぜか急に必要になったというのだ。なんでもお客さんから連絡があって、夜来ることになったそうだ。で、打ち合わせでその資料を使いたい…… って、つまり今会社から帰ったばかりなのにまた会社に戻ってくださいってこった。なんてこったい。

正直「やだよ面倒くさい!」って言いたかった。文句もぶちまけたかった。でもお客さんが困るのはよろしくないし、嫌な思いを我慢してしぶしぶ、「じゃあ、30分後くらいには届けられると思います」と答えた。不満は我慢したつもりだけど、不機嫌感は出てたろうな。

電話を切った瞬間、「なんだよもう!」と叫んだ。くそ寒い中バイクでまた会社まで戻るのも嫌だし、ガソリンも勿体無い。何より1時間近く貴重な憩いタイムを無駄にしてしまう。何か嘘ついて断ればよかったな。「無理そうでしたらお客さんに伝えます」って電話くれた受付の人が言ってたんだけど、ムキになって「いいですよ行きます」なんて言ってしまったのが失敗だった。

苛立つ気持ちで家を出発した。でも、走ってる最中に冷たい冬の夜風に頭が冷やされたみたいだ。冷静になった。よく考えれば電話をくれた受付の女の子に不機嫌な態度を取ってしまったのは最低なことだと。だって彼女は何も悪くないのだ。「はい、持って来たよ」とぶっきらぼうな態度をしてやろうと思っていたのだが、それはやめようと考え改めた。

さらによく考えると、お客さんも悪くない。家でも暇な時に仕事できるように俺は資料を持ち帰ってるわけだけど、お客さんはそんなこと知らない。もしかしたら忙しいなか時間をわざわざ作って夜に訪ねてくれたのかもしれない。こっちのことを考えて良かれと思ったのかもしれない。

なんか自分勝手な都合で俺は腹を立てていたなと恥ずかしくなった。もしさっきの俺みたいなやつがいたら、俺は「自分勝手な奴だなお前は」ってあきれたろう。格好悪い。

会社に到着した。受付の女の子は「すいません。また会社に来てもらっちゃいまして……」と恐縮していた。電話先で俺が不機嫌な態度を取ったからだ。俺は笑顔で資料を渡し「いいですよ別に。大丈夫ですから」と答えた。受付の人もほっとして笑顔になってくれた。